『音を舌で止めてはいけません』なんて昔は言われたこともありました。
今は,どうなんでしょう…
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家,吹奏楽指導者の福見吉朗です。
音の終わり,舌で止める?
クラリネットやサックスでは,舌で止めることが多いのでしょうね。
では,金管楽器は?
昔,あれはまだ大学を出たばかりの頃,ジャズアンサンブルをしていて,
音は舌で止めるべきなのかどうかで練習中に大論争になったことがありました。
「舌で止めるなんてありえない!」と,ぼくは頑として譲らなかったのです。
今にして思えば,あまりに青かったですねぇ(*_*)。じつにはずかしい。。
フィンランディアを例に取って
シベリウスの有名な交響詩『フィンランディア』。
デュトワ指揮,N響のライブです。
この曲を例に取って,ちょっと考えてみましょうか。
まずは,この部分。動画では3分40秒からの部分です。
トランペットとトロンボーンの印象的なパッセージ。
この1拍目の8分音符って,ほとんどの人が舌で止めているのではないでしょうか。
3拍目裏の8分音符も…。
以前に紹介したダグラス・ヨーの MRI 画像を見てみても…
(シングルタンギング,ダブルタンギング,エアアタック)
舌で止めていますよね。
『いや,音の終わりと同時に舌がついているのであって,止めているのではない』
なんて言う人もいるかもしれませんが,なにしろ音が終わるときに舌がついているのです。
じつは以前から自分で,この部分,舌で止めていることには気がついていて,
『あぁ,よくない吹き方をしているんだ…,でもどうしてもこうなっちゃうんだよなぁ…』
なんて思って気にしていた頃があったのです。今思うと,バカでしたねぇ(^^;
でもぼくは不真面目だったから,それをなんとかしなきゃ,とかは思わなかった…。
楽器をやるのには,少々不真面目な方がいいのかもしれませんね(^^;
さて,逆に,この部分。
っても,どこだかわからない?(^^;
4分03秒のところです。
こういう8分音符の打ち込みを舌で止める人は少ないでしょうね。
ジャズは舌で止める?
たとえばジャズのこういうフレーズ。リズムは4ビート。
符点2分音符の終わりとか,はっきりと舌で止めるでしょう。
こういう裏拍の音って,表拍でたまったエネルギーでアクセントになるのですよね。
じゃあ,ジャズやポップスはいつでも舌で止めるものなのか…
そうとは限らないでしょうね。
舌で止めることはよくないことなの?
以前,あるトロンボーン奏者,名前を書いてしまいますと,ビル・ワトラスさんです。
あるクリニックで言いました。
「音を舌で止めてはいけません。やってみますね」
−演奏−
……
「すみません止めていました」(^^;
なぜか時々,舌で止めることはいけないことのように言われることがあります。
でも,じつはみんなやっているんですよ(^o^)
やり方が先にあるのではなく
舌で止めるべきなのか,舌で止めるべきではないのか,
そんな白黒はっきりした結論なんてないんです。
また,この音楽ではどうすべきだとかいう決まりごともないと思います。
要は,どう奏でたいのか,だと思うのですよね。
それによって,自然にやっているのだと思うのです。無意識に。
『こういう時は止めて,こういう時は止めない』って分析や解析をすればできるのかもしれないけれど,
それに何か意味があるのかな…?
やり方,方法論が先にあるのではないのです。
どんな音にしたいのか,どんな演奏にしたいのか,それが最初にまずあって,
ただそれを求めた結果でしかないと思うのです。
大切なことは
舌で止めてはいけないなんてことはない。
舌で止めなければならないなんてことはない。
これは,このことに限りませんが…
変なルールや思い込みで,自分を不自由にしないことが大切なのではないかと思うのです。
それよりも,音楽。
そして,観察。
それが大切だと思うのですよね。
奏法に,『こうじゃなきゃいけない』なんてない。